この記事では医学部編入試験の中で、物理学と化学の分野からの出題がある大学について解説する。
受験科目は多くの人が受験校を決める際に重要視するポイントだろう。
実際に「自然科学」と英語を出題範囲とする大学の中でも、「自然科学」の問題に物理学や化学の問題を出題する大学は多い。
こうした大学にどのように向き合っていくのがいいのか、私の個人的な意見を述べていきたい。
初めに「なぜ医学部編入試験で物理や化学が出題されるのか」を考察し、その後におすすめの教材を紹介する。
目次を参照しながら、興味のある部分だけ読んでいただきたい。
なぜ医学部編入試験で物理・化学が出題されるのか?
なぜ医学部の試験で物理や化学が出題されるのだろうか。
実のところ、医学部に入学した後に物理や化学の知識を使うことは滅多にない。
多くの人がイメージするように、医学部での勉強は暗記が大部分を占めるため、思考力や計算力が要求されることはあまりない。
それでも大学受験や編入試験で、物理化学の知識は必須になっている。
A1. 医学を学ぶために、自然科学の常識(Common sense)が必要だから
私のなりの答えは、
医学以前にサイエンスを学ぶ者としての常識が必要であるから
というものである。理系としての最低限の教養を身につけるため、とも言えるかもしれない。
どの世界・業界でも常識というものは存在する。
金融の世界の人なら、その業務の種類に関係なくiDeCo、利上げ、インフレ、円安などの言葉を知っているし、その意味合いも掴んでいるだろう。
将棋の世界の人なら石田流や穴熊、居飛車は仮に自分の戦術ではないとしても、誰もが知っているだろう。
同様に医学をはじめとする生命科学にも誰もが知っている、知っておくべき基礎知識が存在する。
その指標が大学教養レベルの物理化学ということだろう。(私個人としては高校レベルで十分だと思うが)
確かに医学生が「濃度計算できません」とか「molって何ですか」と言っているのは聞いたことはないし、そんな人には出会ったことがない。
モル濃度くらいは計算できるし、溶解度や質量保存の法則も少なくとも概要は知っているだろう。
社会人から医学部に入る人たちに対して、ある程度の数理的な能力、自然科学の基本的な用語を知っておいてほしいという大学からのメッセージであろう。
A2. 受験生間に差をつけることができるから
身も蓋もない話だが、受験科目を増やせば受験生をより正確に篩にかけることができる。
受験科目が狭義の生命科学と英語だけだとすると、合格者の選別が難しくなる。
ただでさえ、医学部編入試験の受験生は英語に秀でていることが多い。
そうなってくると生命科学だけで差をつける必要があるが、生命科学にしても大学教養レベルまでならば出題内容は限られてくる。
その中で差をつけるには、難問を作るしかないだろう。
その点、物理化学を追加すればより簡単に合格者を選別することができる。
物理と化学は理系の学生の中でも得意不得意がはっきり分かれる。
アカデミアを離れて何年も経過した医学部編入試験の受験生は、英語はできても物理化学にすぐ対応することは難しいだろう。
対策するためにはそれ相応の勉強時間が必要になる。
こうした新しい学習にも取り組める人や、学習耐性のある人を獲得したいという思惑もあるのかもしれない。
物理学・化学を出題する大学は避けるべきか?
それでは今まで物理化学に触れてこなかった受験生は、物理化学を出題する大学の受験を避けるべきであろうか?
実は大学受験レベルの物理化学で対応できる大学は多い
意外かもしれないが、物理化学を出題する大学でも大学受験レベルで対応できる大学は多い。
特に物理は大学受験向けの問題集をやりこめば十分対応できる。
例外として大阪大学の物理学はガッツリ大学教養レベルなので、初学者には負担が大きい。
一方で北海道大学や島根大学、香川大学の物理は大学受験レベルだと思われる。
人によっては十分対応することは可能である。
物理と対照的に、化学はどこも大学教養レベルの知識を要求することが多い。
出題される有機化学の反応機構や反応経路の大半は、大学教養の教科書に載っている。
しかし化学は物理よりはとっつきやすく、勉強しやすいと思う。
受験まで時間がある人は挑戦するのもあり
医学部編入試験で課される物理の問題は、大学受験レベルで対応できるとは言ったものの
大学受験レベルとて簡単ではない。
ここでの大学受験レベルとは、少なくとも関関同立やMARCH以上の大学の理系学部に合格できるくらいを目安としている。
初学者が勉強を始めても、1ヶ月や2ヶ月の勉強では到底太刀打ちできないだろう。
少なくとも半年間の勉強期間を確保できることが最低限の条件となる。
逆に、受験まで一年以上の時間がある人であれば費用対効果は高い。
物理は核心を掴めば、非常に明快に理解できるようになるため、人によっては数ヶ月で深い理解が得られるだろう。
物理学・化学の対策、勉強法について
それでは物理・化学の勉強法を解説する。
やはり大学受験向けの教材から学習を始めることをおすすめする。
理由はざっと挙げれば
- 非常にクオリティーが高い
- 専門書と比較して圧倒的に安価
- アウトプット用の問題集も豊富
などが挙げられる。大学教養レベルの教科書は1冊あたり1万円を超えることはザラであり
初学者は買ったとしてもほとんど理解することが難しいだろう。
基礎から丁寧に土台を作っていこう。
ここでは「大学受験レベル」の物理・化学を仕上げるために有用な教材を紹介していく。
「大学教養レベル」は、お教えできるほど詳しくないので割愛する。申し訳ない。
物理のおすすめの教材
大学受験レベルの物理学を仕上げるために有用な参考書・問題集を紹介していく。
軸となる問題集は次のような教材である。基本は河合塾の教材シリーズである。
物理のエッセンス (河合出版)
物理のエッセンス(力学・波動)4訂版 (河合塾series) [ 浜島清利 ] 価格:924円 (2022/4/17 20:48時点) 感想(53件) |
良問の風 物理頻出・標準入試問題集
良問の風物理頻出・標準入試問題集改訂版 (河合塾series) [ 浜島清利 ] 価格:924円 (2022/4/17 20:55時点) 感想(18件) |
名問の森 (河合出版)
名問の森物理(力学・熱・波動1)3訂版 (河合塾series) [ 浜島清利 ] 価格:1,100円 (2022/4/17 20:59時点) 感想(14件) |
問題集を解く中で理解できない部分が必ず出てくる。
そのときに参照すべき参考書を手元に置いておくと、学習の効率化ができる。
私としては下記の書籍を推薦しておく。
大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理が面白いほどよくわかるシリーズ
大学入試 漆原晃の 物理基礎・物理[電磁気編]が面白いほどわかる本 [ 漆原晃 ] 価格:1,430円 (2022/4/17 21:04時点) 感想(17件) |
化学のおすすめの教材
物理同様に、大学受験レベルの化学を仕上げるための問題集を紹介していく。
化学基礎・化学 基礎問題精講 (旺文社)
価格:1,210円 (2022/4/17 21:14時点) 感想(3件) |
実戦化学重要問題集 (数研出版)
価格:1,001円 (2022/4/17 21:18時点) 感想(2件) |
問題集と併用する参考書として次の書籍をおすすめしておく。
理系大学受験 化学の新研究 (三省堂)
価格:2,860円 (2022/4/17 21:22時点) 感想(8件) |
最後に
いかがであっただろうか。
今回は医学部編入試験で課される「物理学・化学」について解説した。
特に文系出身の人にはハードルが高い科目かもしれないが、時間をかければ比較的努力が報われやすい科目である。
受験までの時間と相談して、要領よく学習を進めていってほしい。
コメント